「幼年期の終わり」アーサー・C・クラーク 感想

第一章

  • ペリーの黒船来訪のスケールの大きいバージョンという感じ。突然現れた自分たちとは異なり、しかも文明的に優れているものに人間はどう対応するのか。敵対派もいれば、友好派もいる。ただ、武力でドカーンと攻めてくるわけではないので、不気味でもある。きっと自分だったら、次第に何も気にならなくなって日々のくらしを送るに違いない。

第二章

  • 黄金時代とこの章は名付けられている。人間より圧倒的に高度な知性をもった宇宙人(オーバーロード)による支配。戦争も貧困もなくなって、24時間以内に世界中のどこにでも行けて、北極や南極にも住める。なのに、なぜかコレジャナイ感がある。この違和感はなんだろう。過保護な親の子どもになったみたいな。
  • 宗教や芸術の衰退する説明があまり納得できなかった

第三章

  • 最後、何がどうなったのかはよくわからなかったけれど、美しいラストだった。地球上で(従来の意味での)人間は自分一人。地球が滅んでいくのを見守る。すこし憧れる。深夜に似たような気分になることがある。あれは美しい感覚だ。
  • 人間がオーバーロードやオーバーマインドと戦ったりするより、この人間は宇宙では小さな存在にすぎないというほうが僕の感覚にはしっくりくる。傲慢な感じがしなくてよい。つつましさがよい。

その他

  • 作者が西洋人で男性で科学畑のひとというのは、知らなくてもなんとなく読み取れる感じがする。この小説には東洋人は(たぶん)登場しない。
  • SF何作か読んで、いろいろな宇宙人をみたけれどこの作品では宇宙人自体はそれほど重要ではないのかな。オーバーロードは人間の知性を100倍にしたような(つまり人間の延長線上にあるような)生き物だし、オーバーマインドは詳しくは語られなかった。