「華氏451度」レイ・ブラッドベリ 感想

  • めちゃくちゃ面白い。言葉が僕の好みだ。頭の中に色や感覚が浮かんでくる文章が僕はとても好きなんだ。
  • 1984年に感じが似ている。おかしな世界のなかで主人公と仲間だけがそのおかしさに気づく、ディストピアの感じが。そして上司に敵のような味方のようなやつがいる。
  • 写真、映画ができて大衆は簡単で手早く楽しめるものを求めていった。本は読むのに時間がかかるし、意見の対立を生む。(「ちびくろさんぼ」は黒人は嫌う、だから燃やしてしまえ…)。車も何もかもがどんどん速くなっていく。景色が、月がみえなくなるくらいに。現代はここまで極端ではないけれど、すごくわかる。なぜもっとゆっくり生きられないのか。なぜインスタントのものが好まれるのか。
  • どちらかというとハッピーエンドだった。救いのありそうな最後だった。1984年のようにはならなかった。
  • 最初の少女(クラリス)は、本当に死んでしまったのだろうか。再登場するかと思ったが、結局最後まででなかった。実は生きてましたみたいな展開だと少し嘘くさいか。
  • 月がよく登場する。作者にとって何か特別な意味があるのだろうか
  • 日々の暮らしのなかで、たくさんやることがある。仕事に行ったり、家事をしたり。それに、テレビやインターネットの情報があふれていて、四六時中頭が満たされている。そういう生活の流れの中にあると、ふと立ち止まる時間がなくなっていく。生きているということを忘れてしまうような。そういう実感はすごくある。僕は生きているという実感を一番大事にしたいと思っている。
  • 主人公の妻が死ぬ箇所の情景はすごく恐ろしい。仮想の世界に没入したまま、そして死ぬ一瞬前に真っ暗な壁(テレビ)に映る自分の空虚な顔をみて、初めて気づいて、死んでいくのだ。
  • 本を記憶し、本そのものとなった人々。本は容器にすぎない。
  • 本ってなんだろうか、も考える。